〈続〉 山のセルフレスキュー 山でビバークするということ
もし自分自身が、あるいは山のパーティがアクシデントに見舞われて負傷したり行動不能に陥ったりしたときに、何ができるか?、どうしたら良いのか?
セルフレスキュー(=自救力)とは、読んで字のごとく、自分で自分を救う力のこと。登山中のアクシデントによって被ったダメージを、それ以上悪化させないようにするための対応策全般のことを言う。
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先日、山のサークル主催のビバーク訓練に参加した。場所は奥多摩で、10月に入り急に寒くなった一日だった。講師役のリーダーによる講義後、ロープワーク、ツェルト張りを練習、ビバークの実践に入った。
講義と練習編
時間管理
・山行計画は日没の2時間前までに宿泊地へ到着するように組む
・道迷い等で、この2時間前の時点で宿泊地への到着が難しいと判断したら、
・歩きながらビバーク適地を探し、使用可能な装備を総動員してビバークに備える
・日没の1時間前までにビバーク態勢を整える
精神的に追いつめられると行動にミスが多くなり、特に日没後の行動は二次災害の原因になる。日照のあるうちに落ち着いて行動すること。
ツェルトの張り方
ツェルトの形状にもよるが、大きく3つのパターンがある
①立ち木に細引き(ロープ)を張り、ツェルトを通す
②立ち木に細引きを張り、ツェルトの肩2か所からスリングでフリクションノットを作り、細引きに巻きつける
③トレッキングポール2本を使い、ツェルトにつけた細引きで引っ張る
張りの強度から言えばお薦めは②。①はロープを伝って雨が入る可能性があるので注意。③も普段からトレッキング ポールを持ち歩く人には良いし、立ち木のないテント場でも使用できる。いずれも細引きやスリング、カラビナを常備し、基本的なロープワーク(クローブヒッチ、クレイムハイスト等)ができることが必須だ。
ビバーク グッズ
・エマージェンシー シート
・ライター、ロウソク、固形燃料
・新聞紙
・ホッカイロ 等
これらは常にザックに入れておき、非常食と同じように、使ったら補充、使わなくても1年に1回は見直しをすること。
実践編
17:06日没
この日の日没は17:06。ビバーク地は樹林帯のため、15時過ぎから徐々に寒くなってきた。各自ツェルトを立てると、自前の装備をフル動員させて潜り込む。新聞紙を体に巻き付け、エマージェンシーシートで覆い、雨具、手袋、帽子、ホッカイロを身に着けて、下半身は空にしたザックに突っ込む。
つらつら眠っては、寒さで目が覚める。この繰り返し。時折甲高い声が聞こえるのは鹿だ。寒くて眠れなくなり、少しでも地面の着地面積を減らそうと体を小さくする。少し離れた場所からはいびきが聞こえてくる。体格の良い人はこんな時でも眠れるらしい・・。
夜中から日の出まで
0時、2時、4時、時計とにらめっこだが、針は遅々として進まない。日の出の1時間前が一番冷え込むが、体が自然に震えだし、奥歯がカチカチと鳴る。
日の出は5:47の予定。少しずつ外が明るくなってくるのが分かる。早く太陽が照らないか。他のメンバーが起き出す音が聞こえ、6時過ぎにツェルトから這い出る。リーダーがお湯を沸かしてくれている。暖かな白湯のなんと美味しかったことか。