「魂の退社」 会社を辞めるということ 稲垣えみ子
(元)朝日新聞の”アフロヘア記者”で有名になった稲垣えみ子さんの「魂の退社」(2016年 東京経済新報社刊)を読んだ。
おもしろかった!
自分と年齢が近いため、育った社会環境や時代の流れ、モノの価値感(というか、そう教えられて育ったコト)にとても共感できるのがひとつ。
そして、ひとつの会社にずっと勤め続け、似たような年齢で会社を去り(まあ彼女は自主退社、自分はリストラだが)、ぬくぬくと”享受”してきた日本の「会社社会」の庇護の厚さに驚愕する、というところもそっくりなのである。
記者として鍛えられてきただけあり、自分の驚愕ぶりをおもしろ可笑しく書くだけではなく、日本独特の「会社」と国政・経済との結びつきや矛盾なども突いている。
なるほどなぁ、そういうことなんだなぁ。同じ経験をしても、自分はそれに驚いたり不満に思ったりするだけだったのだが、分かり易い文章で書き下ろされると、いちいち腑に落ちる。
中でも、今の自分とピタリ!な箇所。
そして改めて、会社って何だったのかと思うのです。
会社を辞めて本当によかった、正解だったーとしみじみ思う一方で、しかしもし会社に就職していなければ私は今頃どうなっていたかと思うと、やはり会社員であったということが私にとっては掛け値なく重要な素晴らしいことだったのだと、これもまたしみじみ思うのであります。
会社とは、私にとってこれ以上ない「人生の学校」でした。(中略)
それはまるで、映画の成長物語のようです。(中略)
で、肝心なのは「旅を終える」ことなのではないでしょうか。旅はいつかは終わる。旅から卒業する日が来る。そのことを決して忘れてはいけない。(中略)
そう。会社は修行の場であって、依存の場じゃない。そして修行を終えた時、あなたはいつでも会社を辞めることができます。結果的に会社を辞めても、辞めなくても、おれはどちらでもいい。ただ、「いつかは会社を卒業していける自分を作り上げる」こと。それはすごく大事なんじゃないか。
(魂の退社 「その6 そして今」 より)
四半世紀に渡る会社員生活、自分にもいろいろなことがあったけれど、間違いなく言えるのは、会社が自分を鍛えてくれた、ということ。それこそ、電話の取り方から、文書の作り方、宴会のマナー、歯車の一つとして動くこと、悔しいときにもぐっと持ち堪えること、良いこと悪いことひっくるめて、自分という人間を鍛え上げてくれた。
だからこそ今の自分がある、という感謝の気持ちはきっと変わらず持ち続けるだろう。
そして、会社はいつかは通り過ぎる場所であり、その後も人生は続く、というのもまさに共感。
会社で働くことに疑問を持っている人、自分も会社を辞めたいと思っている人、そして一生会社にしがみついて生きていこうと思っている人。この本が、すべての人に、改めて「会社で働くこと」について考えるささやかなきっかけとなれば幸いです。
(魂の退社 「プロローグ」より)
これから就職しようというひと、就職したけれど悩んでいるひと、そんな若いひとがいたら、きっとプレゼントしちゃうだろうなぁ、この本。
おススメです。
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