とろりとしたおかゆさん
どうしたわけか、急にお腹が痛くなり、外出先から慌てて帰宅する。
痛みで早くは歩けず、浅くなりがちな呼吸を深くしようとしながら、そろり、そろりと。
ぶじに帰宅し横になり、一瞬ほっとするが、腹痛は波動のように周期的に襲ってくる。
吐き気と悪寒にさいまされながら、たすけて、たすけて、とつぶやいていた。
4回目の嘔吐のあと、引き出しをひっくり返し、数年前の食中毒の処方薬残骸を見つけて飲み下す。
ほんの20分ほどで腹痛が収まり、胃の痙攣も穏やかになり、とろとろと眠ることができた。
傷みとこわばりから解放され、翌朝は生き返った気持ち。
脱水にならないよう、ぬるま湯にスポーツ飲料の粉末をごく薄く溶いてすこしずつ飲む。
夕方、お腹がすいてきた、と感じられたので、生米からおかゆをつくる。
土鍋に洗ったお米、10倍の水を加え、強火にかける。沸騰したら弱火にし、ときどき焦げないようにかき混ぜながら30分ほど。
とろりとしたおかゆさんのできあがり。
ぱらりと塩をふり、ぽとぽとと醤油をたらし。
おかゆのあまみと相まって、あたたかさとうまみが体にしみわたった。
健康でいられるってすごいことだ。
つらい経験をすると、それ以前の当たり前に思っていた生活が奇跡のように思える。
いま、闘病で苦しんでいる友人に、この経験をメールしてみた。
あまり苦労を言わないひとだけれど、珍しく現状の報告と、最後に一言「愚痴を言ってごめん」と返ってきた。
つらいことは言っていいんだよ。
友達はそのためにいるんだからね。