働くことはつらいこと 森博嗣「孤独の価値」
4月に入り、黒いスーツの新社会人、新入生が、ターミナル駅に溢れかえっている。
みんな、少しの緊張と大きな希望を胸に、新生活をスタートしたことだろう。
ぜひ楽しんで、チャレンジして行って欲しいし、うまく行かないときは落ち込んだってよいと思う。
若いということは人的資産がまだたくさんあるということ。いくらでも取り戻すことができるのだ。
そして、ひとと自分を較べないこと。
自分は自分、ひとはひと。それでよいのだ。
森浩嗣の「孤独の価値」(2014年 幻冬舎新書)を読んでいる。
商業主義による単一イメージの刷り込みを警告していて、腑に落ちる。
仕事にやり甲斐を見つけること、楽しい職場で働くことが、人生のあるべき姿だ、という作られた虚構がある。それをあまりに真に受けて、現実とのギャップに悩む人が増えている。(中略)
僕はその本で、仕事は本来辛いものだ、辛いからその報酬として金が稼げるのではないか、というごく当たり前のことを書いたのだが、読者からは、「そう考えれば良かったのか、と目から鱗が落ちた」とか、「読んで気が楽になった。なんとか仕事を続けられそうに思えた」とか、そんな声が多く寄せられた。
当たり前のことが、当たり前でなくなっているようだ。
それくらい、商業的な宣伝で作られた虚構が、今や大衆の常識になってしまっているのである。
自分が就職活動をはじめたときに、辛口でちょっと煙たい存在だった伯父がお昼をご馳走してくれた。業種や職種、活動内容など、アドバイスのほとんどを忘れてしまったが、今でもひとつだけ覚えていることがある。
『仕事は厳しいぞ。楽しいこともあるかもしれないが、基本、仕事をするっていうのは辛いもんだ。10回にそうだな、1、2回楽しいことがあったら良い方だと思っておくんだな。』
この言葉が胸につきささったからこそ、自分は粘り強く社会人生活を続けてこられた、とよく思う。シュガーコートされた励ましばかりをもらっていたら、現実の厳しさにすぐに負けていただろう。
「孤独」=かっこ悪いこと
「仕事」=楽しい、やりがいのあるもの
そんな、お仕着せの”レッテル”に縛られることはない。
いつでも、じぶんはじぶん、なのだ。
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