もうひとりの玉三郎 幽玄の「二人椀久」 十二月大歌舞伎
なんとも贅沢な演出に、感激でぼうっとしてしまった十二月歌舞伎「京鹿子娘五人道成寺」。
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忘れないうちに、もうひとつの演目「二人椀久」に言及しておかなくては。
豪商である椀屋久兵衛は、遊女松山に入れあげた挙句、身代を傾ける。投獄中、夢の中で松山に再会して逢瀬を楽しむが、気がつけばすべては幻だったと知る。
薄暗がりから始まる照明と長唄の響きが、もの悲しさを感じさせる幕開け。
今回は配役の妙もあり、懐の深い遊女松山と、ぼんぼんで打たれ弱い椀屋久兵衛、と見ることができた。勘九郎が若々しく、松山を失った深い嘆きと思慕が観客に伝わってくる。松山の幻として登場する玉三郎は、年若い情人を慰め慈しむような風情が、なんとも魅力的で、また悲哀も感じさせた。
娘道成寺とはまったく違って見えた玉三郎。
どちら素晴しく、どちらも忘れがたい。
同じ時代に生きていて、この舞台を共有できるなんんて、なんとも幸せなことだ。