次世代にバトンを渡す重責 能楽師和泉流狂言方 野村家の「三番叟」披き
12月22日 朝日新聞の夕刊に狂言界の喜ばしいニュースが掲載されていた。
「三番叟」は、能楽の中で最も神聖視される祝言曲「翁」の一部で、若手の通過儀礼のような演目であるらしい。
残念ながら自分はまだ観たことがないのだが、NHK『プロフェッショナル』で、野村萬斎さんが三番叟を披いた際の映像は記憶に残っている。面をつけない「直面(ひためん)」で掛け声をかけながら足拍子を踏んで躍動的に舞う姿は、それまで見たことのある狂言とはまた別の迫力だった。萬斎さんの、自分の体の中に埋め込まれた能楽の遺伝子に突き動かされるように舞った、というコメントも興味深かった。
先日、武蔵野大学能楽センターで人間国宝 野村萬さんのお話を伺う機会があった。
(野村萬さんは野村万作さんの兄で、野村万蔵さんの父、野村萬斎さんの伯父にあたる)
その中で、「伝統というものは子が親を越えていかなければ意味がない。そうでなければ残っていけないのです」と話されていたのが強く心に残った。自分が教わったすべてを子に与え、さらにその上を行けと鍛え続ける。芸とはかくも厳しいものなのか・・。
それにしても野村結基くんも、もう17歳。
萬斎さんは、まだ子供だった結基くんに「なぜ僕は能楽をやらなくてはならないの?」と聞かれ、答えが見つからなかったそうだ。
次世代にバトンを渡すことができて、一番嬉しいのは彼かもしれないね。